毎日、踊ることだけを考えていた。
遅くから始めたことなど関係なく、自分の生きる道はここだと信じ、踊ることに、全力を注いでいた。
それが、一つの怪我で崩れた、4年前の3月。
自分の目指していたゴールが一瞬で真っ白になり、どこへ行けば良いか、わからなくなっていた。
あれから道は変わり、しばらくやっていなかったダンスを再開したのが去年の10月。
硬くて重かった体が少しずつ戻り、調子のあがってきた時に合格したオーディションが今年の3月。
時間のたつのは早いもので、気づけばもう、来週本番。
昨日、最初で最後のフルメンバーでの練習があった。
皆すごい集中力と体力で、7時間のリハ中一度も緊張が途切れる事なく、あっという間にリハが終わってしまった。
すごい、すごいメンバーだ。
まだまだ未完成な部分はあるけれど、昨日初めて、踊った直後に自分の心が震えるのがわかった。
ようやく、スタート地点だ。
自分の心が震える事が出来て初めて、誰かの心を動かせると、僕は思う。
そこからの道のりが、とても大変だけれど。
踊りは、一瞬。
瞬きしていたら、見逃してしまうようなめまぐるしい動きの連続で、すぐに終わってしまう。
食べ物のように体に取り入れるわけでもなく、踊らなくても、踊りを見なくても、死ぬわけではない。
だけど、ダンサー達は、その一瞬の為に気の遠くなるような時間と労力を費やす。
自分の体と対話し、指先に、体の内に、神経を張り巡らす。
それぞれの人生の中で得た経験を、想いを、動きに篭めて、誰かに託す。
それが、人の心を動かせると、自分の生きがいだと、信じているから。
怪我でのブランクに、悔いはない。
一度倒れて、立ち上がった僕に伝えられる何かが、きっとあるはずだ。
今回の彩のメンバーは24人。
様々な人がいる。
人生をダンスに捧げ、自らの芸術に昇華させ、見る者の目をひきつけるダンサーもいれば、憧れだった舞台に勇気を出して登り、喜びを表現するダンサーもいるし、いつもはふざけまくっているのにここぞという所でがちっと決める筋肉ダンサーや、いつもアメをなめているダンサーも、そんなやんちゃなメンバーをさらりとまとめあげるダンサーも。
皆が皆、個性的で、優しくて、魅力的で、それぞれの目標に向かって、全力を出している。
ペースや手段は違うけれど、同じ場所に向かって集まって来ていることを、昨日のリハーサルで、実感した。
こんな素晴らしいメンバーの中に入って、一緒に踊らせてもらえる事を、心から感謝している。
1度は踊れなくなったダンスを、現役をしりぞいた後もこんな素敵な舞台に立てる事を、心から幸せに思う。
ジャズのむごい僕に、農作業の後で焼けまくった僕に、嫌な顔一つせずに親切に教えてくれた皆。
理解して、応援してくれた家族と仲間達。
本当にありがとう。
本番まであと8日。
自己満足で終わらぬよう、皆の足手まといにならぬよう、もっと高みに昇らねば。
メンバーの皆、見に来てくれるお客様、よろしくお願いいたします!